ボストンの語学学校に通っていたとき、私は自分に一つのルールを課しました。それは「母国語を話さない」というチャレンジです。日本人の友達と一緒にいると、どうしても日本語を使ってしまい、英語を話す機会が少なくなってしまうと感じたからです。せっかく留学しているのに、日本と同じ環境に戻ってしまうのはもったいないと思い、自分なりに強い決意で始めました。
最初の頃はとても大変でした。頭の中に日本語が浮かんできて、それを英語に変えるまでに時間がかかりました。クラスで先生が質問しても、英語で答えたい気持ちはあるのに、言葉がすぐに出てこなくて悔しい思いをしました。それでも日本語を口にすることはせず、なんとかジェスチャーや簡単な単語を組み合わせて伝えるようにしました。
ある日、クラスメイトとランチに行ったときのことです。日本人の学生も一緒でしたが、私はあえて日本語で話さず、英語で会話を続けました。最初は不自然でぎこちなかったのですが、次第に相手も英語で返してくれるようになり、ランチの時間が自然な英会話の練習になりました。その瞬間、「このチャレンジを続けてよかった」と感じました。
また、母国語を封印したことで、友達の幅も広がりました。日本語を使わないと決めた分、他の国から来た留学生と積極的に話すようになったのです。スペイン人やフランス人、韓国人の友達ができて、放課後や週末は一緒に出かけたり、宿題を助け合ったりしました。共通の言葉は英語しかないので、自然と英語を使う力が鍛えられました。
一番印象に残っているのは、授業中にペアワークをしたときです。相手が自分の英語を理解してくれた瞬間、自分の中で小さな達成感がありました。完璧な文法ではなくても、伝えることができるという自信が生まれ、英語を話すことへの抵抗感がなくなっていきました。
もちろん、母国語を話さない生活は簡単ではありませんでした。疲れたときや、細かいことを正確に伝えたいときは、日本語で話してしまいたい気持ちがありました。でも、その気持ちを乗り越えることで、英語で考える力が少しずつ身についていったのです。
振り返ると、このチャレンジはEC Boston校での留学生活で最も大きな学びの一つでした。母国語を話さないという小さなルールが、結果的に大きな自信につながりました。言語は勉強するだけでなく、実際に使ってこそ力になるということを、身をもって体験しました。